本書は、世界的に高い評価を得ている熱力学の代表的な教科書である。公理に基づく熱力学体系の構築は他に類をみないものであり、熱力学を学び必要とするものにとっては必携の書である。
上巻では、まず巨視的な観測から自然に導かれる巨視変数が定義され、エントロピー増大の原理に基づいて平衡状態を定める条件が論じられる。示量変数と示強変数の関係がわかりやすく説明された後、熱機関の効率がどのようにして決められるのかが詳しく説明される。
ついで、温度や圧力の示強変数を独立変数とした場合の平衡条件が明快に説明される。この時必要となるルジャンドル変換の説明は、論理的で大変わかりやすく類書には見られない特色となっている。熱力学量の相互の関係を示すマクスウェル関係式の説明も極めて明快である。最後に述べられる平衡状態の安定性の問題は、下巻で詳しく論じられる相転移の熱力学への導入となるものである。
本書を通して、日常的な現象用いた例題や問題が数多く与えられているので、講義のテキストや輪講の教科書として最適である。
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