本書は、熱力学と統計力学の基礎が極めて整合性よくまとめられており、格好の教科書であるとともに輪講用のテキストとしても最適である。
下巻では、まず相転移の熱力学が論じられる。特に古典的描像がなぜ破綻するのかがわかりやすく説明され、繰り込み群の方法に至る経緯が示される。ついで、絶対ゼロ度近傍の熱的性質の特徴が説明された後、熱力学体系のまとめと、気体、化学反応、希薄溶液、固体、などさまざまな系の性質が詳述される。
引き続く平衡状態から外れた系の不可逆熱力学および輸送係数の詳細な説明は明快であり、本書のもう一つの特徴となっている。
第 II 部では、熱力学のさまざまな表示と対応させて統計力学の基礎が述べられる。熱力学におけるエントロピー最大の原理およびルジャンドル変換とさまざまな分配関数との関係が平易に説明され、類書にない特色となっている。ボーズ粒子系とフェルミ粒子系の記述では、基本的性質とともにボーズ凝縮が詳しく論じられる。さらに熱力学系で見られるゆらぎが説明された後、変分原理に基づいて平均場近似が導入され、相転移の基本的な取り扱い方が述べられる。
熱力学における巨視変数の物理的な意味が対称性に基づいて論じられる第III部も読み応えのあるところである。
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